2008-01-28
小倉優子と共演。
先日。
友人の某大物芸能関係者から連絡が入った。
彼が、どのくらい大物かというと、映画の現場でセカンドアシスタントディレクターとして、監督に足蹴にされる日々に追われているくらいだ。
1日20時間労働を月25日くらいやっているのに、毎晩酒を食らっているのだから間違いなく大物だ。
その彼が電話口で、俺に「小倉優子主演のドラマに出演して欲しい」と言って来た。
いきなりの申し出である。
確かに、俺はヘタしたらハリウッドでデビューしていてもおかしくないルックスの持ち主である。
今に思えば、これまでスカウトされたことがないのが不思議なくらいな存在である。
この大物業界人は、友人であったせいで気が付かなかったが、実は相当な目利きだったのだ。
もともとの脚本では登場の予定がなかったのに、あまりの俺の存在感に、出演依頼をせざる得なかったようだ。
俺は、契約書を交わすためにエージェントを通して欲しいと思ったが、今にも土袈裟せんばかりに泣きながら依頼してくるので、ここは一つ男を立ててやるかと、出演を快諾した。
肝心の俺の役はというと、
あの小倉優子の身に起こったピンチを救うべきために突然現れたヒーローともいうべき役であった。
正確に言うと、某研修生である小倉優子が犯したミスを他の乗客に怒られるのに、その怒号が気になって乗客B、D、E、Fとともに、思わず振り返る乗客Cの役である。
出演カットはわずかに1カットだが、全米注目の貴重な1カットであることは間違いない。
俺の演技にレッドカーペットの上を歩ける作品になるかが掛かっていると言っても過言ではないだろう。
なぜ、こんな重大な役目を俺にまかせたのかと聞くと、「製作予算がないので、暇そうなヤツに手当たり次第に声をかけている」と答えた。
何語で喋っているのか理解出来なかったが、俺でなければならない切実な理由があることだけは分かった。
当日。
普段からプロのスタイリスト以上にオシャレのため、専属スタイリストも断り自前の衣装に身を包んだ俺は、こりん星からわざわざタクシーに乗ってやってきたという小倉優子のいる現場に案内された。
彼女は、チラリと、恋人役とも言うべき、俺の姿を一瞥した。
だいぶ照れ屋と見えて、これから共演すると言うのに、挨拶も出来ないようだ。
そして、
監督の「アクション!」の声とともに、いよいよ本番が始まった。
小倉優子が演技を始める。
どことなく俺を意識した演技だ。
俺は、
「落ち着きなよ、そんなに俺を意識しないでもキミはキミのままで素敵さ」
と言葉には出さないまでも以心伝心で彼女に伝えた。
「あ、すいません!」
優子の声が響き渡る。
それを聞いた俺が、振り返った。
迫真の演技だ。
この俺の振り返り様に、 全世界の視聴者が、涙する瞬間である。
監督も、周囲のスタッフも、俺の演技力に押し黙った。(そうでなくても本番中に黙らないスタッフはいない)
「カットぉぉ!!」
監督の怒号が響き渡る。
エアチェックを終えた監督が「オーケー」の声を出すと、全スタッフが俺に感謝の意を述べた。
一息ついた俺は、優子に挨拶しなきゃな、と思って席を立つと、残念ながら優子は真っ先に控え室に戻ってしまった。
返す返すも照れ屋なようだ。
この作品が放送されれば、ハリウッドから出演依頼が殺到することは間違いない。
その前に、優秀なエージェントを探さなければなるまい。
ふー。
“芸能人”という商売も自分がなってみると、なかなか大変である。

















