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そんなわけでのバンコククラブナイト。
日本じゃ、引き籠り。クラブで楽しそうに夜遊びしている連中などとは絡みたくもない人間なのに(嫉妬はするけど)、バンコクにいると進んで通いたくなるのだから不思議だ。南国の空気のせいだろうか。
大混雑の店内の人をかき分け、2階の奥に自分たちの居場所を見つけると、ジェニーちゃんのためにビールを買いに行く。
戻って来ると、ジェニーちゃんが愛用のIPHONEを取り出した。
お、二人の想い出を写メでもするのか。
ポーズを取ろうとするが、ジェニーちゃんは俺のことなど眼中にないように自分を撮り出した。
さすがオカマ。
自分大好き。
他人には興味なし。
まあ、いいや。
と思って、乾杯し、超キュートなジュニーちゃんを眺めながらビールを煽った。
俺がこうしている間に、急に全世界的なパラダイムでも起きて、俺のルックスが最上級にモテモテになるような価値観の転換が起きたり、何かの拍子に大金持ちの権力者にでもなったりしたら良いなぁ、などと無意味な妄想に耽りながら、ただただ日頃の鬱屈を忘れるために踊った。
しかしである。
俺が盛り上がっても、
ジェニーちゃんは、退屈そうに携帯をいじるだけ。
せっかく買ってきたビールにすら手を出さない。
一人で盛り上がる俺がバカみたいである。
「こういうところは嫌いか?」
ジェニーちゃんは、頷いた。
「1時間くらいだからさ、それまで付き合ってくれ」
俺がそう頼むと、ジェニーちゃんは頷くも、なおもテンションは上がらない。
さすがの俺も、隣で連れが不機嫌にしているのに、一人盛り上がるほど無神経ではない。
ベットに横になったきり、立ち上がりもしないし、こちらに視線をよこしもしないジェニーちゃんに、さっきまでのテンションはどこへやら。俺まで不機嫌になっていった。
なんだか腹まで立ってきたので、俺は、
「帰りたいのか?」
と聞いた。
ジェニーちゃん、俺の不機嫌なこの質問にも、気を使う様子もなく、また「イエス」と頷く。
完全にキレた俺は、
「じゃあ、一人で帰れよ」
と普通の連れ出し(ペイバー)料の何分の一かのタクシー代だけ放り投げて、入り口を指差した。
ジェニーちゃんは、俺の怒りに謝ることもなく、お金だけさっさと拾うと帰り支度。さすがオカマ。徹底的にゴーイングマイウェイである。
しかし、その後の一言に思わずずっこけた。
「わたし、こんな人が大勢のなか、一人じゃ歩けない。アナタ、私をタクシーのところまで送って」
っておい!
俺は怒っているって言ってるのに、どんだけ乙女チックなんだよ。
怒る気持ちも萎えるほどの純情白書だった。
断るのも大人げないので、手を取ってタクシー乗り場まで連れて行く。
ジェニーちゃんのあまりに魅力的な背中を眺めながら、結局、この日はこれで終わりだった。
俺のアナルバージンは、今日も無駄に守り通されてしまったのだった。。
×××
翌日。
バンコク最終日。
やっぱり、オカマはダメだな。
やはり男と女がつがいになるように神様は人類を造り賜わったのだ、と改めて実感したのだが(仏教徒だけど)、何故か次の日もふらふらと足が向いたのはパッポン通りの別のオカマゴーゴーバーだった。
だって、呑んでいてテンションが上がるのは結局オカマのほうが断然なんだもん。
オカマの前にオカマ無し。オカマの後にオカマ無し。
そんな心境だった。
しかし、ここで俺は前々回のバンコク訪問のときに指名していた別のオカマ(竿付き、豊胸前)に再会を果たすことになる。
もう何度目かのバンコク訪問なのに、置き土産は毎度オカマしかない自分に途方に暮れそうになったが、まあそれはそれとして、再会を喜び、気持ち良くチップを弾みながらセクハラする。
彼(彼女)は、執拗にペイバーを望んできたが、昨日のこともあるしテキトーにあしらっていると、スルスルとバーテンのおっさんオカマが寄ってきて、
「彼女をペイバーしないの〜?いいわ、ディアフレンド!もっと楽しい気分にさせてあげるわ!ちょっと来なさい!」
と俺をトイレに連れて行こうとする。
おいおい、なんだよ、おっさん。まさか店のトイレでフェラチオでもする気か?!
ジェニーちゃんならともかく、なんで、こんな汚いおっさんのオカマに。。
と、俺は、思わず身構えると、おっさんは、ポッケからタバコを取り出した。
「換気扇に向かって吸いなさい」
おっさん、ニヤけながら薦めてくる。
なんだよ、俺はタバコなんか吸いたくねえぞ。
そう思いながらも、一口吸うと、ほのかなタタミのような匂いが。
てめえ!これ、タバコじゃねえだろ!
と遵法精神を尊重している俺は、怒りとともに問いつめた。
どうりで、このおっさん。さっきからニコニコニヤニヤしてるな、と思ったらこんなことか。
さすが50年近くオカマやってるだけある。
ロクなことを教えてくれない。
俺の怒りは頂点に達し、
もらったシガーを根元まで交互におっさんと吸い合うと、
そのまま、
「ポッケに入ってる残りのモノをよこせ!没収だ!」
とおっさんに迫った。
おっさんが手をサッと目の前に出してきたので、怒りとともに、その手の平に200バーツほどの紙幣を置く。
そうして、数本のシガーレットを没収した。
こんなもので気持ち良くなろうなど、人間の風上にも置けない!
そんな制裁を込めての没収だった。
そうして、チップをオカマちゃんたちにバラまいて、そそくさと店を出て、コンビニでビールを買い込み、こそこそとホテルへ。
ホントに没収が必要なモノだったのか、法律家の卵としては確かめなければならない。
ふーーーー。。
×××
ああ。
隕石でも落ちて来ないかなぁ。。
ビール片手に、そんな想像に耽っているうちにバンコク最後の夜も無駄に更けていったのだった。
チャンチャン(死)