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先日。仕事で終電を乗り過ごしたので、新宿からタクシーを使って自宅に帰ろうと路上に出た。
星の数ほどいるタクシーのなか、1台の流しのタクシーを拾う。
上野まで。
というと運転手の動きがハタと止まる。
聞こえてなかったのかと思って、再度、
上野までね。
と重ねて言うと、
了解しました。
と訛りのある口調で答えて、車は動き出した。
たまにタクシーに乗ると、とりあえず「景気はどうですか?」と言って、話しかけるのだが、この日は疲れていたのもあって、ぼんやり黙って車窓を眺めていた。
すると、少しして、運転席から、
うえの、うえの・・・。
と呟くような独り言が聞こえた。
何か上野を知らないかのような、拙い口ぶりだ。
しかし、都心を流すプロのタクシードライバーが新宿-上野間のルートを知らないはずはないだろう。そう思って、聞き流した。
ところが、車は、飯田橋のあたりで、上野方向とは真逆の方向に曲がろうと車線変更を行った。
ドライバーによって、多少のコースの違いはある。ルートによっては、1メーター分くらい値段が高くつくこともあるが、大体はスルーしてドライバーに任せたままにする。
しかし、左に曲がらなきゃいけないのに、右に曲がるルートはさすがにない。
運転手さん、逆!逆!!
と叫んで、正しい方向に誘導する。
すいません、すいません。
と謝る運転手。
そこで、初めて俺は聞いた。
運転手さん、上野までの客は乗せないの?
すると、運転手は運転中だというのに、グルッとこちらを振り向いて、
すいません。始めて1ヶ月なんです。
と答える。
年の頃、40代半ば。何か別の仕事を廃業したのだろうか。
それにしても、訛りがきつい。
出身地を聞くと、会津だという。
そりゃ、簡単には東京の道は覚えられないだろう。
そう思って、話を続けるが、このドライバー、いちいちこちらの質問に、顔を向けて話し返してくるのだ。
礼儀正しいといえばそうだが、走行中にすることじゃない。普通、ドライバーといえば、視線すらもなるべく合わせないように、バックミラー越しに話しかけるのが常だが、珍しいというより、危ないことこの上ない。
そう思って、軽く注意すると、ドライバーは卑屈なくらいに謝って、運転に集中しようとする。
ほんの10数分の出来事だが、このあたりで俺は、だんだんこのドライバーが憐れに思えてきた。
しかし、どこか自分を見ているような気になってきたので、とにかく優しい口調で話を続けることにした。
(無駄につづく)
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先日。仕事の用事があって蒲田へ。
次の日、朝早かったので駅の真ん前のビジネス に泊まる。
しかし、昼夜逆転の生活に慣れてしまっているため、まさか12時前などに眠れない。
蒲田に着いたときにはすでに12時を過ぎていたが、フラフラと街に出る。
都内主要街だけじゃなく、地方にまで羽を伸ばして、無駄に飲み歩いてきたが、蒲田は初である。
予備知識なしだったが、ピンサロらしき 店が数店。キャバや中国系エステも何軒もあり、大勢の客引きが出て、結構賑わっていた。
全く圏外だったが、蒲田、侮れなし。
と、思いながら、グルリと1周。
街の様子が分かったところで、ぼったくりの不安もあったが、店の看板が出ている店で、4000円程度なら1軒入ってみるか、と物色を始めたとき、携帯に電話が鳴った。
こんな時間に誰だ?
と思って出ると、大学からの腐れ縁の知人のF男だった。
「すまん。ちょっと、話を聞いてくれないか」
F男は暗い声でそう口にした。
なにやら深刻そうな口ぶりだったので、賑やかな通りを抜けて、とあるラーメン屋に入店。
そこで一杯呑みながら、話を聞く事にした。
「俺は、今さっき、目の前で男が痴漢をしているのを目撃したのに、ずっと助けられなかったんだ」
F男はそう言った。
「あの場合、俺は何をするべきだったのか。いや、でも、女の子から助けを求めてくるわけではなかったし・・・でも、自己嫌悪だ・・・でも終電だったし、トラブルは女の子にとってもまずかった・・・なんてことは問題じゃないはず・・・でも、仕方がなかった・・・」
などと、ほとんど自問自答のように電話口で延々、反省と言い訳を交互に繰り返した。
自分が被害者でも加害者でもないにも関わらず、無駄に大きな苦悩を抱えてしまったようだった。
そこで、
そのシチュエーションで、いきなり取り押さえたり大声を出して威嚇するのが難しいのは分かるが、黙って男の手を払うことくらいは出来たんじゃないのか。
と偉そうなことを言って、彼の心をさらにえぐる。
根は人が良い彼は、本気で後悔するうめき声を上げた。
「時計の針を戻すことは出来ないだろうか」
彼は呟いた。
「今の人類の技術では無理だ。起こったことはもう起こってしまったんだ」
俺が答えると、彼はさらに声を落として、
「そうか。これからの人生、一人の女を見殺しにしたという刻印を背負って生きていかねばならないわけだな」
と言った。
「 ああ。十字架を背負って生きていけ」
俺のアドバイスに彼が静かに同意すると、電話は終わった。
この間に、俺はビールとチューハイを飲み干していた。
他人の苦悩ほど良い酒のつまみはない。
すっかりほろ酔いになってしまったため、人生初の蒲田キャバクラはお預けとなった———。
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と、
いうような嘘をエイプリルフールの日に書こうと思っていたのだが、無駄に忙しくて、書き損ねたら、翌日どころか日付的には翌々日になってしまった。 。
うーむ、残念。
さっき、上野公園を歩いたら、もう桜が咲いていたんだな。
月日は猛烈に過ぎていく。
と感傷に浸りながら、先々日の話。
およそ5年ぶりくらいにキャバ嬢と同伴した。
同伴ほど意味のないものはないと思って、デートの誘いに同伴で対応しようとするキャバ嬢には、敵意を剥き出しに、ずっと断り続けていたが、
その子は、 前日に、自分がどれだけ困っていてノルマが達成出来ずに首になる寸前かということを、携帯メールで400字近く打ってきた。
それを読んだとき、なんとなく、「ま、いいか」と思ってしまった。
いわゆる“助けて営業”だが、嘘でも本当でも、そこまでの長文を作って送って、レスしてくることに敬意を払ってあげることもアリかな、と。
無駄にまた大人の階段を昇った証拠かもしれない。
本気で昇天する日も近かったりして。。