2009-08-18
「俺はもう絶対キャバクラへ行かない」
昨日。
毎日欠かさず酒は呑むが、ほとんどが独り酒、しかも家呑みという完全に引き篭もりの生活を送っているなか、久々に大学仲間で半分ニートのSと飲む。
いつもの赤提灯で落ち合うと、Sは現場の仕事で日焼けして、なかなか健康そうな顔で現れた。
そして、乾杯と同時に焼酎を一口呑むと、彼は、いきなり、
「俺はもう絶対キャバクラになんていかない」
と聞いてもいないのに、断言してきた。
無駄に女に騙されたのかと思って尋ねるが、
そうではなく、最近仕事仲間に誘われて繰り返し通ったキャバクラのおかげで、数年かけて貯めた貯金が底をつきそうだというのだ。
自分の毎月の稼ぎよりも飲む、というのは大問題なので、
まあ、そりゃ確かにヤメたほうがいい。
と、彼の心意気をフツーに褒めた。
それから、他愛もない話をポツポツとしながら、それぞれ数杯ずつ焼酎を開けると、「店でも変えるか」となった。
すると、若干酔ったテンションになりながらも、彼は再び、
「俺は絶対にキャバクラには行かないからな。ガールズバーも行かないからな」
と自分に言い聞かせるように、3回くらい同じ台詞を繰り返した。
ここまで言われると、むしろコイツはホントは行きたいんじゃないのか?
と勘ぐったので、
「まあじゃあ、キャバクラ以外で楽しくなれる店に連れて行ってやるよ」
と言って、開業38年、昭和の匂いを残す某というクラブに連れていった。
この店は、40代から60代のお姉さん方が勤める店で、カラオケにはピアノの先生が付いて伴奏してくれる。
広く優雅な(よい意味で)時代遅れなソファや内装、いわゆるスナックなどとも全然違う、他にはない雰囲気を持った店だ。
客は、いつ行っても、30代どころか40代すらもほとんど見かけない。50代~70代がメインといった店である。
そして、演歌を中心としたカラオケが始まると、他のテーブルの客であってもキチンと合いの手を入れて、店全体で盛り上げる。
店を出るときは、見知らぬ客同士といえど、他のテーブルを回って、
「お騒がせしました。お先に失礼します」
と頭を下げながら出て行くような、古き良き時代の紳士のマナーを携えた者しか入ることを許されない店である。
夜遊びの経験値でいったら、俺のほうがSを遥かに凌駕しているので、すでに先に手を打っておいて、たまに通っていたのだ。
俺が顔を見せると、いつもイキな手拍子で盛り上げる60をとっくに過ぎた店長が喜んでテーブルに案内してくれた。
この店は、Sの雰囲気にピッタリだったようで、しっかり店長と意気投合し、ピアノの先生とコードの打ち合わせをしながらカラオケを楽しんでいた。
そして、2時間ほど楽しみ、時計が12時を回ったので、店を出ることにした。
会計はそれなりに取られるが、半分ニートのSの財布には野口英世の1枚も入っていないので、俺が払うことになる。
まあ、これは仕方がないとしても、焼酎のボトルを3分の2ほど独りで空けたSは、完全に千鳥足。
「大丈夫か?」
と心配する俺に、さっきまでの心意気はどこへやら、ヘロヘロな口調で、
「女の子のいる店行かないの~?」
と懇願するような視線を送ってきた。
さっき堅い心意気を口にしてから、わずかしか経っていない。もう彼の気持ちは崩れ落ちて揺れ曲がっているのだ。
「キミは二度とキャバクラ行かないんじゃないのか?」
そう言うと、
「じゃあ、ガールズバーは?ガールズバーへ行こうよ」
とほとんど聞く耳持たずな口調で、さらに食いついてきたので、さっきS自身が口にした言葉を引き合いに出して、
NO MORE KYABAKURA
の精神を説いてあげたが、泥酔いの彼の耳には、恐らく何も響かなかったであろう。
それから、財布に600円ほどしか入っていない彼が、俺と別れた後、再びネオンへと戻っていったのを見かけたが、面倒なので、後は追わなかった。
その後、彼がどうなったかは知らない---。
















