2010-11-28
ぼったくりと戦った男2
自分を引いたキャッチを見つけた彼だったが、2時間歩き回ったおかげで、すっかり酔いの醒めた頭で考えた。
果たして、このままキャッチに詰め寄ったとして、キャッチが素直に業者のことを口を割るだろうか?
もしも、「お前なんか会ったこともない」と言われたら、その時点で水掛け論になって埒が明かないのではないか。
そう考えた彼は、絶妙な作戦に打って出たのだ。
まずは怖いから歌舞伎町交番へと向かい、警官を呼ぶ。
警官は、「またこの手の通報か」という顔ながら、市民からの通報を見過ごすことは出来ずに、Tとともにキャッチのいるところに。
そして、キャッチを目の前にして、警官に対して、こう言ったのだ。
「ぼったくりに連れていった上に、お金を受け取ったのはこの人です」
×××
もちろん、ウソである。
直接カネを受け取るキャッチなどいない。
しかし、このTの策略に、キャッチは思わず、「金受け取ったのは俺じゃねえだろ!」と、Tを業者に引いたことまでは認めてしまったのだ。
こうなると、警官としては、「キャッチが金のやりとり関与するはずねえだろ」とたぶん陰では思いながらも、事情を聞かないわけにはいかない。
Tとキャッチは、警官に引き連れられて交番へと連れて行かれたのだという。
そこで、1時間近く押し問答。
「金を受け取ったのは俺じゃねえ!」
キャッチはそれを繰り返すが(事実だからまあ当然)、警官は、「だったらお前が紹介した業者に連絡して呼べ」となる。
キャッチと業者がどんな関係かまでは分からないが、まあぼったくりのヘルスなんて、まともな渡世の輩が仕切っているわけはない。
キャッチとしては、自分の身を守るためにも絶対に口を割るわけにはいかない。
いい加減疲れてきた警官は、
「キミも売春罪で逮捕されるリスクもあるけど、それでも被害届を出して彼を告訴するかい?」
とTに踏み絵を与えた。
特段法律に詳しいわけでもないTは、その言葉に内心ビビりながらも、キャッチの一転したおどおどした雰囲気から、後一押しで落ちるほうに賭け(実際はこの状況でTのほうが逮捕されることなんてほぼありえない)、
「僕は捕まってもいいので、彼を訴えてください」
とカマを掛けた。
これがチェックメイトの言葉で、
客引きは、それを耳にするなり、「分かった!金は返すからそれで許してくれ!」と財布から18000円を取り出し、Tに差し出したという。キャッチの自腹である。
金を返せば済むのかという気もするが、そこは歌舞伎町。
警官も、御役御免とばかりに、それで手打ちを進めてきた。
Tのほうも、とりあえずは金を取り戻せば良いと、それでキャッチを開放。
最後は、警官に、「キャッチに付いていくほうも悪いんだからね」と説教をされながら、(報復がないように)歌舞伎町の外まで見送られて、バトルを終えたという。
この話は、後日、1時間近くにも渡る回想録だったのだが、正直、思わず痺れたTの戦略であった。
歌舞伎町では、「キャッチに付いていかない」は第一だが、万が一ボッタくられて、許せないときは、是非参考にして欲しい戦略ではある。
ただ、キャッチの怒号は結構半端なかったようで、そこそこの肝は据えておく必要はあるようだが・・・。
















